
概要と開発の背景
むろと(ARC-4802)は、2000年代末(平成21年度計画)に日本の防衛省および三井造船株式会社(現:Mitsui E&S / 三菱重工マリタイムシステムズ株式会社)によって開発・建造され、2013年(平成25年)より海上自衛隊へ導入された自衛隊唯一の敷設艦(ARC)である。海上自衛隊では、1980年に就役した初代「むろと(ARC-4801)」が長年にわたり主要海峡や基地周辺における水中音響監視装置および通信用海底ケーブルの敷設・維持任務を担ってきた。しかし、初代むろとの艦齢延伸に伴う老朽化や、周辺海域における他国潜水艦の活発化に伴う警戒監視網の機能強化が喫緊の課題となった。さらに、複雑な海底地形や潮流下での効率的な敷設作業とライフサイクルコストの抑圧が求められた。これを受け、初代艦の運用知見を継承しつつ商船構造の導入と電気推進システムを採り入れた次世代の海底インフラ構築アセット(計画時名称: 平成21年度計画4,900トン型敷設艦)として開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、艦船建造コストを大幅に抑えるために商船構造(建造費約284億円)を全面的に採用しつつ、過酷な洋上環境下で数センチ単位の正確な位置保持を可能にする高度な自動艦位保持システム(DPS)を統合した点にある。初代むろと(基準排水量4,500トン)から4,950トン(全長131.0m、全幅19.0m)へと艦体を拡大し、推進機関には優れた静粛性と精密な出力制御が可能なディーゼル・エレクトリック方式(発電用ディーゼル4基)を導入した。推進器には360度全周旋回可能なポッド式アジマススラスター2基と艦首バウスラスターを組み合わせることで、直進航行だけでなく横移動やその場旋回など自由自在な運動性能を発揮する。艦首部・艦尾部には大型のケーブル敷設用シーブ(滑車)と専用のドラム・ウインチメカニズムを備え、海底敷設作業や音響監視センサーの水中投入・揚収を確実に行う設計思想が具現化されている。
運用実績と評価
2013年3月に就役して以降、海上自衛隊の自衛艦隊直轄海洋業務群(現:作戦情報群隷下第1海洋業務隊)へ配備され、呉基地を定係港として一貫して制式運用されている。制式採用以降、日本周辺の重要海峡や太平洋・東シナ海等における水中固定聴音装置(SOSUS等)の敷設、海底通信ケーブルの敷設・点検・修復任務、ならびに米海軍との協同敷設訓練(グアム島方面派遣訓練等)に従事してきた。実際の運用においては、アジマススラスターとDPSがもたらす極めて高い位置保持・微速旋回能力と、商船構造による優れた経済性が具体的かつ高く評価された。音響測定艦(ひびき型)や海洋観測艦と並び、海上自衛隊の対潜戦(ASW)における音響警戒網を物理的な水中インフラ面から支える唯一無二のアセットとして、現代においても極めて重要な立ち位置を占めている。
| Official Name (正式名称) | むろと(敷設艦) / JS Muroto |
| Country of Origin (開発国) | 日本 |
| Manufacturer (製造メーカー) | 三菱重工業 下関造船所 |
| Designed (設計年) | 平成21年度(2009年度)計画において基本設計・予算化が行われ、2013年3月15日に竣工・就役して運用を開始 |
| Primary Operators (主な運用組織) | 日本: 海上自衛隊 情報作戦集団隷下 作戦情報群 第1海洋業務隊 |
| Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量 | 基準排水量:4,950 t / 満載排水量:非公開 |
| Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水 | 全長 131.0 m × 最大幅(W) 19.0 m × 深さ(H) 11.0 m × 喫水(D) 5.7 m |
| Propulsion (機関): | ディーゼル・エレクトリック推進(電気推進) / 推進用ディーゼル発電機 3基、推進電動機 2基、2軸駆動、総出力 7,500 PS |
| Speed (速力): | 16 kt |
| Range (航続距離): | 非公開 |
| Complement (乗員数): | 約110人 |
| Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー): | 航海用レーダー(OPS-20等)、海洋観測装置一式(敷設ルート等の水中器材調査用) |
| Armament (兵装): | なし |
| Aircraft Carried (艦載機)、 Carrying capacity(積載能力): | 搭載機数:固有の有人艦載ヘリ・無人航空機は0機 ヘリコプター運用能力:なし(飛行甲板、発着艦能力は非装備) 車両・貨物運搬能力:海底に敷設するための通信ケーブルや水中聴音監視装置(ソナー)を格納する巨大なケーブルタンク、電纜敷設装置(埋設装置含む一式)を艦内に標準装備。物資等の一般的な貨物・車両の輸送を主目的とした設計ではない |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
画像の引用元
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