



概要と開発の背景
Pacific 24 Rigid Inflatable Boat(パシフィック24 複合艇 / RHIB)は、1990年代末よりイギリスのBAE Systems(Small Boats製造部門)が開発・製造し、イギリス海軍(Royal Navy)および王立艦隊補助船隊(RFA)へ導入された7.8m級の標準艦載複合艇である。開発の背景には、1980年代からイギリス海軍の水上艦艇に標準搭載されてきた旧式艦載艇「Pacific 22」の老朽化と、現代の過酷な洋上警備ミッションにおける走破性、即応性能、およびSOLAS(海上人命安全条約)規格に準拠した最新安全基準への適応ニーズが存在した。各種水上戦闘艦(Type 23/26/31フリゲート、Type 45駆逐艦、Queen Elizabeth級航空母艦、River級遠洋巡視船等)のダビット(揚降装置)から迅速に運用可能な設計が施され、対海賊作戦、麻薬取締、臨検(VBSS)、高速捜索救難(SAR)、および要衝港湾の警備を支える汎用水上アセットとして配備が進められた。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、高強度グラスファイバー(FRP)で成形されたV型硬質船底(Rigid Hull)に、多気室構造のインフレータブル(膨張式)チューブカラーを全装し、高い復元性と過酷な波浪下での耐衝撃性能を両立している点にある。主要量産改修型「Mark-4」のパワートレインには、最高出力370馬力を発揮するヤンマー(Yanmar)製またはFPT/Iveco製インボード・ツインターボディーゼルエンジンと、ハミルトン(Hamilton)製ウォータージェット推進(またはステンドライブ)が統合され、最大38〜39ノット(約70km/h以上)の高速機動力を発揮する。母艦のダビットに吊り下げられた空中状態でエンジンを始動できる「ドライランニング(Dry-Running)」機能を備え、着水と同時に即座に離脱・即応展開へ移行する機構が採用されている。船内には隊員の身体的負荷を低減する衝撃吸収ショックミティゲーションシートや、SOLAS適合の膨張式自己起立(Self-Righting)Aフレーム構造が配置され、万一の転覆時においても安全に自力復元できる技術的アプローチが施されている。
運用実績と評価
制式化および最新「Mark-4」規格の導入以降、Pacific 24はイギリス海軍および王立艦隊補助船隊の主要水上艦船の標準艦載艇として全方位で運用されているほか、イギリス各州の警察水上部隊、海難救助組織、さらにはオーストラリアやトリニダード・トバゴ沿岸警備隊などの海外機関にも制式導入されている。実際の運用においては、中東ペルシャ湾での対海賊・水上警戒タスク、カリブ海での不法密輸船追撃、ならびに北大西洋における海難救助ミッションへ継続投入された。過酷な海象条件における圧倒的な船体安定性、ウォータージェット推進による障害物巻き込み防止と浅瀬での走破能力、並びに150海里(約278km)以上の連続航続性能が現場要員から高く評価されている。近年では、自律操縦・遠隔制御技術を組み込んだ無人実証艇「Autonomous Pacific 24 (PAC24)」の各種試験運用が行われており、有人・無人を問わず次世代の多目的小型水上プラットフォームとして確固たる地位を維持している。
| Official Name (正式名称) | Pacific 24 RHIB (rigid inflatable boat) |
| Country of Origin (開発国) | イギリス |
| Manufacturer (製造メーカー) | BAE Systems (旧 BAE Systems Halmatic) |
| Designed (設計年) | 前級Pacific 22の後継として開発され、イギリス海軍において25年以上にわたり運用されているが、初期モデルの明確な設計年は不明であり、現行の最新主力モデルである第4世代「Mark 4(Mk IV)」の設計(契約締結)年は2015年(2015年12月に英国防省がBAE Systemsと製造契約を締結)、運用開始(1号艇の進水・配備)年は2016年(2016年4月に第1号艇を進水)である。 |
| Primary Operators (主な運用組織) | イギリス:イギリス海軍、王立海兵隊(水上艦隊 / NavyX)、王立艦隊補助船(RFA) トリニダード・トバゴ:トリニダード・トバゴ沿岸警備隊(Coast Guard – ケープ型巡視船艦載艇) |
| Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量 | 基準排水量: 約 2,380 kg (約 2.38 tonnes / 自重排水量) 満載排水量: 不明 (自律型USVモデルでライト排水量 約 6.0 tonnes) |
| Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水 | W (全長): 7.8 m (25 ft 7 in / 780 cm) H (全幅): 2.6 m (8 ft 6 in / 260 cm) D (喫水): 0.55 m (1 ft 10 in / 55 cm) |
| Propulsion (機関): | インボード・ディーゼル推進 (1× Yanmar 6LYA-STP ツインターボ・ディーゼルエンジン / 単体出力 370 hp / 約 375 PS × 1基 / Hamilton HJ 241 ウォータージェット または スターンドライブ) ※初期型・一部モデルは船外ガソリンエンジン (2 × 150 hp / 約 152 PS) 総出力: 約 370 hp (約 375 PS) |
| Speed (速力): | 38 kt 〜 39 kt (約 70.3 km/h 〜 72.2 km/h) |
| Range (航続距離): | 150 nm (30 kt 巡航時 / 約 278 km) 以上 |
| Complement (乗員数): | 乗組員 2名 + 乗客 最大 6名 (最大合計 8名 収容可能) |
| Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー): | SOLAS (Safety of Life at Sea) 準拠航法・監視システム 電子制御エンジン自己診断システム (Electronic Self-Diagnostic Technology) Nautomate® 自律制御システム (自律艇 / USV型モデル) |
| Armament (兵装): | None (手動マウント式 L7A2 GPMG 7.62mm 機関銃等を必要に応じて着脱可能) |
| Aircraft Carried (艦載機)、 Carrying capacity(積載能力): | 貨物運搬能力: 乗員・乗客最大 8名 相当の有効荷重 (ペイロード)、取り外し式衝撃吸収シート換装による医療搬送・特殊装備の積載能力、母艦ダビット運用能力 (水外エンジン始動機能 / ドライランニング) |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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