



概要と開発の背景
あすか(ASE-6102)は、1990年代前半(平成4年度計画)に日本の防衛庁(現・防衛省)および住友重機械工業株式会社(浦賀造船所)によって開発・建造され、1995年(平成7年)より海上自衛隊へ導入された専用設計の試験艦(ASE)である。海上自衛隊では、1980年(昭和55年)より運用されていた自衛隊初の専用試験艦「くりはま(ASE-6101)」が各種の試作兵装やソナーの洋上試験を担ってきた。しかし、くりはまは小型(基準排水量950トン)であったため、将来の主力を担う大型の固定式フェーズド・アレイ・レーダーや垂直発射システム(VLS)、大型曳航ソナーといった次世代の先進艦載兵器システムを統合して試験・評価するには容積や設備が著しく不足していた。さらに、防衛技術の高度化に伴う自動化・省力化やステルス性の検証、ならびに試験要員を多数収容して長期間運用できる専用プラットフォームの拡充ニーズが急務となった。これを受け、護衛艦並みの大型船体を備えた後継の先進兵器実験艦(計画時名称:平成4年度計画4,200トン型試験艦)として開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、前級くりはま(基準排水量950トン)から4,250トン(満載6,200トン、全長151.0m)へと船体を約4.5倍に拡大し、各種の試作機器や実験装置を迅速に着脱・換装できる高度なモジュール構造と多目的空間を備える点にある。艦橋上部には射撃指揮装置FCS-3(試作型)や各種多機能レーダーの4面固定アンテナを取り付ける専用台座を配置し、前甲板にはMk 41 VLS(8セル)の設置スペース、艦底および艦尾には新水上艦用ソナー(OQS-XX)や曳航ソナーの試験区画が確保された。推進機関には自衛艦初となるCOGLAG(ガスターボエレクトリック・ガスタービン複合)推進方式を導入し、のちの「あさひ型」護衛艦などへの技術的知見を提示した(※試験終了後は電動機を撤去しガスタービン駆動へ移行)。また、運航要員の省力化推進として操舵・主機遠隔操縦装置やボタン式速力通信機を導入して省人化を図り、艦内には約100名の試験要員用居住区、実験解析用講堂、計測室が完備されている。
運用実績と評価
1995年3月に就役して以降、自衛艦隊直轄の「開発隊群(開発隊群直轄技術評価開発隊)」に配備され、横須賀基地を定係港として海上自衛隊により一貫して制式運用されている。制式採用以降、海上自衛隊の主要護衛艦(ひゅうが型、あきづき型、あさひ型、もがみ型等)に搭載された射撃指揮装置FCS-3、新水上艦用ソナー(OQQ-21)、07式垂直発射魚雷投射ロケット(07VLA)、12式魚雷、23式艦対空誘導弾(A-SAM)、各種自走式デコイなどの試作評価試験を次々と完遂し、自衛隊の装備近代化に不可欠な役割を果たした。また、2011年の東日本大震災では緊急出港して支援活動を展開したほか、近年では防衛装備庁が開発を進める「電磁軌道砲(レールガン)」の世界初となる艦上洋上射撃試験や、高出力レーザーシステムの洋上試験プラットフォームとして運用された。単なる実験艦にとどまらず、将来の海上防衛技術を洋上で検証する唯一無二の実験アセットとして、現代においても極めて高い実効性と重要な立ち位置を占めている。
| Official Name (正式名称) | あすか (試験艦) / JS Asuka |
| Country of Origin (開発国) | 日本 |
| Manufacturer (製造メーカー) | 住友重機械工業 浦賀造船所 |
| Designed (設計年) | 平成4年度(1992年度)計画において基本設計・建造予算が計上され、1995年3月22日に竣工・就役して運用を開始 |
| Primary Operators (主な運用組織) | 日本: 海上自衛隊 自衛艦隊開発隊群隷下 技術評価開発隊 |
| Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量 | 基準排水量 4,250 t / 満載排水量 6,200 t |
| Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水 | 全長 151.0 m × 最大幅(W) 17.3 m × 深さ(H) 10.0 m × 喫水(D) 5.0 m |
| Propulsion (機関): | ガスタービン推進(※かつてはガスタービン2基と電動機1基を組み合わせたCOGLAG推進の試験を行っていたが、現在は電気推進試験の終了に伴い、ガスタービンのみで駆動) / 川崎重工業(Kawasaki Heavy Industries)がライセンス生産したGeneral Electric LM2500 ガスタービンエンジン 2基、2軸駆動、総出力 43,000 PS |
| Speed (速力): | 27 kt |
| Range (航続距離): | 非公開 |
| Complement (乗員数): | 約70人(※試験時にはこのほかに防衛装備庁やメーカーの試験技術員が約100名まで便乗可能な余裕を持った設計となっている) |
| Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー): | 航海用・対水上捜索レーダー(OPS-20、OPS-18等)、対空捜索レーダー(OPS-14等)。また、FCS-3(射撃指揮装置3型)やOQS-XX(新型ソナーシステム)などの試作装備、近年ではFCネットワーク用アンテナの実証試験装置が搭載されている |
| Armament (兵装): | VLS(垂直発射システム):水上艦用試作垂直発射装置 1基(Mk.41 mod.17 VLS をベースとした試作型、8セル、主に新世代ミサイルの発射試験用。試験内容に応じて撤去・再搭載等が行われる) 水上発射管:3連装短魚雷発射管 2基(新世代魚雷の発射試験用) 固定艦砲・CIWS:非搭載(固定の常設武装は持たない) 特記試験装備:防衛装備庁が開発中の「電磁レールガン(Electromagnetic Railgun)」や「高出力レーザーシステム(High-Power Laser System)」の海上実射試験用として、前甲板などに一時的に試作砲や光学・電源筐体が搭載・試験運用される |
| Aircraft Carried (艦載機)、 Carrying capacity(積載能力): | 搭載機数:固有の有人艦載ヘリ・無人航空機は0機(常駐機はなし) ヘリコプター運用能力:船体後部に広大な飛行甲板(ヘリコプター発着艦甲板)と、1機分のヘリコプター格納庫を装備、SH-60K等の哨戒ヘリコプターの発着艦および艦上運用試験(着艦拘束装置等の評価)に対応する能力を持つ 車両・貨物運搬能力:一般的な車両・貨物輸送用の設計ではないが、艦内には各種試験機材や試作システム、計測器類を大量に積載・設置するための広大な実験室(試験技術官室)や予備スペースが確保されている |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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画像の引用元
- By 海上自衛隊, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=142553775
- By 江戸村のとくぞう – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=111182915
- By To kar010 – Own work, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=162667147
- By 海上自衛隊, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=98870477


