
概要と開発の背景
ノースロップ・グラマン B-2A スピリット(Northrop Grumman B-2A Spirit)は、1970年代末から1980年代にかけてアメリカの Northrop Corporation(現 Northrop Grumman Corporation)が主契約者となり開発し、1989年に初飛行、1997年よりアメリカ空軍へ配備された第5世代の全翼型長距離戦略ステルス重爆撃機である。開発の背景には、冷戦期におけるソビエト連邦の警戒レーダー網や高度な対空ミサイル網の急速な発達が存在した。従来の B-52 や B-1B では敵防空網の突破が困難視されるなか、敵のレーダー探知を極限まで回避し、要塞化された目標や重要拠点へ直接進入して核兵装および精密誘導兵器を投射できる革新的な長距離打撃アセットの獲得を目指す「先進技術爆撃機(ATB / Advanced Technology Bomber)」計画として開発がスタートした。
構造と技術的特徴
構造上の最大の特徴は、垂直尾翼や水平尾翼を一切持たない完全な全翼機(フライング・ウィング)デザインを採用し、レーダー反射断面積(RCS)を極限まで低減させた卓越した低可測性(ステルス性能)にある。機体表面には特殊な電磁波吸収材料(RAM / AHFM)が全覆塗布されており、電磁波の直接反射を防ぐ傾斜エッジ設計が徹底されている。テールレス構造ゆえに空力的に不安定な機体を制御するため、4重冗長化されたデジタル・フライ・バイ・ワイヤ(FBW)飛行制御システムと、主翼端のスプリット・エレボン(デセロン)機構が統合されている。パワートレインには General Electric 製 F118-GE-100 ターボファンエンジン4基を機体内部へ埋め込む形で配置し、排気の赤外線シグネチャを冷却・遮蔽する構造を備える。内部2箇所のロータリーランチャーには最大約18t〜23tの兵装を直接積載でき、前級機と比較して外部露出突起を皆無とした設計思想を持つ。
運用実績と評価
1997年の初期受入以降、アメリカ空軍(第509爆撃航空団等)においてのみ独占的に制式採用・運用されている。当初は132機の調達が計画されていたが、冷戦終結や1機あたり20億ドルを超過する過大な建造・維持コスト、ならびに複雑な塗膜整備要求の影響により、最終的な調達数は21機(実戦配備20機)に留まった。1999年のコソボ紛争(アライド・フォース作戦)において実戦初投入され、本土ミズーリ州ホワイトマン空軍基地から往復30時間以上の無寄港飛行を行い、GPS誘導爆弾(JDAM)による精密打撃で圧倒的な戦術成果を実証した。その後のアフガニスタン紛争、イラク戦争、リビア攻撃任務(オデッセイ・ドーン作戦)においても、最前線の防空網を無力化する中核機体として重用された。超大型貫通爆弾(GBU-57 MOP)を直接運用可能な唯一のプラットフォームであり、次世代の B-21 Raider への順次移行が進む現代においても、アメリカの戦略核・通常打撃力を最前線で支える不可欠な最上位爆撃アセットとして現役運用が続けられている。
| Official Name (正式名称) | B-2A Spirit |
| Country of Origin (開発国) | アメリカ合衆国 |
| Manufacturer (製造メーカー) | Northrop Grumman Corporation (主契約者および全体設計・システム統合。主要共同チームとして、The Boeing Company、Hughes Radar Systems Group、General Electric Aircraft Engine Group、Vought Aircraft Industries, Inc. が参画) |
| Designed (設計年) | 1970年代末から始まった先進技術爆撃機(ATB)計画に基づき、1979年に基本要件定義が始動、1981年10月20日にNorthrop社が主契約者として選定されたことでシステム詳細設計が本格開始された。その後、開発フェーズを経て1988年11月22日にパームデールの第42工場で初めて公式にロールアウト(公開)され、1989年7月17日に初飛行に成功した。実戦部隊への最初の機体(Spirit of Missouri)のデリバリーは1993年12月17日に行われ、1997年4月に初期作戦能力(IOC)を公式に獲得したことでアメリカ空軍での実質的な現役運用が開始された。 |
| Primary Operators (主な運用組織) | アメリカ合衆国:アメリカ空軍(戦略抑止とグローバル打撃を統括する空軍地球規模攻撃コマンド(AFGSC)傘下の第8空軍に所属し、ミズーリ州ホワイトマン空軍基地を唯一の常駐拠点とする第509爆撃航空団(実戦を担う第393爆撃飛行隊 “Tigers”、および作戦・機種転換訓練を担う第13爆撃飛行隊 “Grim Reapers”)、ならびに同基地で機体を共有して共同運用にあたる空軍国民近衛兵(ANG)第131爆撃航空団(第110爆撃飛行隊)、さらにカリフォルニア州エドワーズ空軍基地にて機体統合アビオニクス等の先進試験・改修評価を担う空軍機材コマンド(AFMC)第412試験航空団傘下のB-2統合試験部隊(CTF)にて「B-2A」を運用中 |
| Crew (乗員) | 2名 (1x Pilot、1x Mission Commander) ※必要に応じて最大3名でのフライトに対応する座席設計構造を持つ |
| Dimensions (寸法):全長、全幅(翼幅)、全高 | L (全長): 69 ft (20.9 m) W (全幅(翼幅)): 172 ft (52.12 m) H (全高): 17 ft (5.1 m) |
| Empty / Max Takeoff Weight (自重 / 最大離陸重量) | Empty (自重): 160,000 lb (72,575 kg) Max Takeoff Weight (最大離陸重量): 336,500 lb (152,634 kg) |
| Powerplant (エンジン):型式、推力 | 型式: 4x General Electric F118-GE-100 (アフターバーナー非搭載のノン・アフターバーニング型ターボファンエンジン) 推力: 1基あたり 17,300 lbf (77 kN / 4基合計最大 69,200 lbf クラス) |
| Max Speed (最大速度):マッハ表記、高度別の速度 | マッハ表記: High Subsonic (高亜音速 / マッハ 0.8 クラス) 高度別の速度: 高高度(実用巡航高度域)の兵装非搭載状態において 約 628 mph (約 1,010 km/h) となり、熱および赤外線シグネチャーの抑制とソニックブーム発生防止のためにアフターバーナーを排除していることから、全高度において超音速飛行性能は有さず高亜音速領域に制限される |
| Combat Range (戦闘行動半径) / Ferry Range (航続距離) | Combat Range (戦闘行動半径): 空中給油能力を有するため、実質的な限界値は乗員の体力限界および勤務時間制限にのみ依存する。給油を伴わない単独での標準インターコンチネンタル(大陸間)作戦プロファイルは約 4,400 miles (約 7,000 km) 前後 Ferry Range (航続距離): 6,000 n.mi 以上 (約 6,900 miles 以上 / 約 11,100 km 以上) ※機内燃料(167,000 lb)を満載した無給油での最大移動(自力回航)距離。空中給油を1回挟むことで 10,000 n.mi (12,000 miles / 19,000 km) 以上の連続フライトが可能となる |
| Service Ceiling (実用上昇限度) | 50,000 ft (15,240 m) |
| Hardpoints (ハードポイント):ミサイルや爆弾の搭載能力 | 外部ハードポイントは無し(ステルス性維持のため)。胴体中央部に並列配置された2カ所の「機内兵装庫(ウェポンベイ)」内に装備された「回転式ランチャー(Rotary Launcher Assembly / RLA)」またはラックアセンブリにて最大 40,000 lb (18,144 kg) 〜 改修内容により最大 60,000 lb (27,216 kg) の通常・核兵装を完全格納マウント可能。標準ロードアウトとして 80x Mk-82 500ポンド爆弾(または GBU-38 JDAM)、16x GBU-31 JDAM、16x B61-7/-11/-12核爆弾、16x AGM-158 JASSM長距離巡航ミサイル、あるいは超大型超重規格の超大威力地中貫通爆弾である 2x GBU-57 MOP(Massive Ordnance Penetrator)を独占的にマウント可能 |
| Fixed Armament (固定武装):機関砲の口径、弾数 | なし |
OPERATING FORCES / 運用国・軍種
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