ちはや(潜水艦救難艦) / JS Chihaya

JS Chihaya
ASR-403 ちはや

概要と開発の背景

ちはや(ASR-403)は、1990年代末(平成8年度計画)に日本の防衛庁(現・防衛省)および三井造船株式会社(玉野事業所)によって開発・建造され、2000年(平成12年)より海上自衛隊へ導入された潜水艦救難艦(ASR)である。海上自衛隊では、1970年代初頭から運用されていた旧式の潜水艦救難艦「ふしみ(46ASR)」が老朽化に伴い更新時期を迎えていた。また、当時の海上自衛隊における潜水艦勢力の拡充や深海域での遭難事故に対応するため、従来のレスキュー・チャンバー方式を超える高精度な深海救難能力と、飽和潜水支援体制の拡充が強く求められた。さらに、救護を要する乗員に対する再圧治療をはじめとする大規模な医療処理機能の集約が急務とされた。これを受け、先行して運用されていた潜水艦救難母艦「ちよだ(56AS)」の基本構造を踏襲しつつ、純粋な救難機能と医療設備を大幅に強化した大型救難アセットとして開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、タイプシップである「ちよだ(基準排水量3,650トン)」から5,450トン(満載6,900トン)へと艦体を飛躍的に大型化し、造波抵抗を低減するバルバス・バウと高精度な自動艦位保持システム(DPS)を統合した点にある。艦央部には開口部(センター・ウェル)を備え、全天候下で深海救難艇(DSRV)を海中へ直接展開・回収できる揚収機構を完備する。DSRVは遭難潜水艦のハッチへ直接結合して一度に十数名の乗員を救助する性能を持ち、本艦では新たに空中重量約3トン・最大潜航深度2,000mを誇る無人潜水装置(ROV)も自衛隊艦艇として初搭載された。推進系には三井造船製「12V42M-A」ディーゼルエンジン2基(19,500馬力)を搭載し、速力21ノットの高速巡航性能を発揮する。定位置保持のため艦首に2基、艦尾に2基のサイドスラスター(計4基)を備えるほか、艦内には高気圧障害治療用再圧室や集中治療室(ICU)を含む充実した医療メカニズムが構築されている。

運用実績と評価

20003月に就役して以降、海上自衛隊の潜水艦隊直轄から第1潜水隊群へ配備され、呉基地を定係港として一貫して制式運用されている。制式採用以降、日本周辺海域における潜水艦訓練の救難警戒や各種国際潜水艦救難訓練(パシフィック・リーチ等)へ継続投入され、多国間での救難連携実効性を具体的に証明した。実際の運用においては、2001年にハワイ沖で発生した愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」沈没事故における遺留品捜索・回収支援任務へ派遣され、過酷な深海域での高い捜索能力と飽和潜水技術の実戦的価値を示した。また、陸上自衛隊ヘリコプター機体捜索など各種災害派遣・捜索救助任務でも顕著な実績を残している。後継の「ちよだ(ASR-404)」へ引き継がれるFRP製新世代DSRV運用体制の基礎を築いた基幹アセットであり、現代の海上自衛隊において潜水艦部隊の安全を根底から支える極めて重要な立ち位置を占めている。

Official Name (正式名称)ちはや(潜水艦救難艦) / JS Chihaya
Country of Origin (開発国)日本
Manufacturer (製造メーカー)三井造船 玉野事業所(現:株式会社三井E&S)
Designed (設計年)平成8年度(1996年度)計画において基本設計・予算化が行われ、2000年3月23日に竣工・就役して運用を開始
Primary Operators (主な運用組織)日本: 海上自衛隊 潜水艦隊隷下 第1潜水隊群
Displacement (排水量):基準排水量 / 満載排水量基準排水量 5,450 t / 満載排水量 6,900 t
Dimensions (寸法):全長、最大幅、喫水全長 128.0 m × 最大幅(W) 20.0 m × 深さ(H) 9.0 m × 喫水(D) 5.1 m
Propulsion (機関):ディーゼル推進 / 三井造船製12V42M-A 三井42M-Aディーゼル機関 2基、2軸駆動、総出力 19,500 PS(※精密な定位置保持のため、艦首に2基、艦尾に2基、計4基のサイドスラスターを装備)
Speed (速力):16 kt
Range (航続距離):6,000nm(13 kt巡航時)
Complement (乗員数):約125名(※一部の公開データや一般公開資料では、各種救難要員を含めて約130名と表記される場合もあり)
Sensors and Processing Systems (センサー・レーダー):航海用レーダー(日本無線製 OPS-20 等)、捜索用ソナー(SQS-36D(J))、海底探索用・音響定位用各種センサー一式
Armament (兵装):なし
Aircraft Carried (艦載機)、
Carrying capacity(積載能力):
搭載機数:固有の有人艦載ヘリ・無人航空機は0機
ヘリコプター運用能力:船体後部に広大な飛行甲板(ヘリコプター発着艦甲板)を装備。ただし、格納庫や固定の固有機は持たず、主に遭難潜水艦の救難時における救急患者のヘリ輸送や物資の着艦・発着に対応する能力。
車両・貨物運搬能力:深海救難艇(DSRV)1隻、無人潜水装置(ROV)1式、飽和潜水設備(DDS)などの各種深海救難装置一式、11メートル作業艇2隻を艦内に標準装備。また、遭難潜水艦乗員の救助・治療を目的とした重症者用ベッドを含む充実した医療設備(救急医療室、手術室等)の積載能力を有しており、一般的な車両・貨物輸送用の設計ではない

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

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画像の引用元
  1. By Jacob Kohrs – https://www.dvidshub.net/image/5738186/blackhawks-conduct-deck-landing-jmsdf-vessel-js-chiahaya-sept-9-2019-2-2, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=90585218

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