M992 FAASV (Field artillery ammunition supply vehicle)

M992 field artillery ammunition supply vehicle
M109A6 パラディンへ給弾する第1騎兵師団第2旅団戦闘団第82野戦砲兵連隊第3大隊A中隊所属のM992

概要と開発の背景

M992 野戦特科弾薬給弾車(FAASV)は、1970年代末から1980年代初頭にかけてアメリカのBowen-McLaughlin-York(BMY Combat Systems、現在のBAE Systems Inc.)によって開発され、1985年よりアメリカ陸軍へ導入された装軌式の自走砲弾薬給弾車両である。陸上部隊の主力を担うM109 155mm自走榴弾砲部隊では、従来、M113装甲兵員輸送車をベースとした非装甲のM548貨物搬送車が弾薬輸送に用いられていた。しかし、M548はキャンバストップ仕様の無装甲車体であったため、対砲兵射撃の破片や小火器射撃に対して乗員および積載弾薬が無防備であり、前線での生存性の低さが課題とされていた。また、重い155mm砲弾や装薬を手作業で積降・移送する作業は著しい時間を要し、高機動化する自走砲部隊の射撃継続能力に限界が生じていた。このような安全性の確保と給弾の迅速化・省力化を図る更新ニーズを受け、M109自走砲と同等の追従走破性と装甲防護力を備えた専用の補給プラットフォームとして開発がスタートした。

構造と技術的特徴

構造上の最大の特徴は、M109 155mm自走榴弾砲の履帯式シャーシをそのまま活用し、砲塔の代わりに圧延アルミニウム合金(5083アルミ合金)で作られた全密閉型の高剛性装甲上部構造(スーパーラクチャー)を載せている点にある。この設計によりM109部隊と完全に同一の不整地走破性と高い防護性能を確保している。内部機構には油圧駆動の電動/手動コンベアシステムが組み込まれており、車体後部ドアを上方へ跳ね上げて頭上防護シェードを形成した状態で、M109自走砲の給弾ハッチへ直接接続し、毎分最大8発の速度で155mm砲弾や装薬を車内から安全かつ滑らかに移送できるメカニズムを備える。車内には90発から95発の155mm榴弾および対応する装薬、信管を一括格納できる固定ラックが配置されている。さらに、車体に5kWの補助動力装置(APU)を標準装備しており、主エンジンを停止させた状態でも油圧コンベアや車内給電を維持できる構造上の工夫がなされている。

運用実績と評価

1985年の量産調達開始以降、アメリカ陸軍をはじめ、台湾(中華民国陸軍)、エジプト、サウジアラビア、ギリシャ、モロッコ、タイなど世界各国の自走砲部隊で制式採用・運用されている。湾岸戦争やイラク戦争などの実際の大規模作戦においては、前線の厳しい環境下でもM109自走砲の直近に位置し、乗員を危険に晒すことなく迅速な連続給弾を行う高い補給実効性が具体的に高く評価された。M109自走砲の世代交代(M109A6 Paladinおよび最新のM109A7)に合わせて各種改修型も開発されており、GPS位置測位機能やエンジン出力向上を図った「M992A1」、電気・冷却系統を補強した「M992A2」、さらにM109A7に合わせてM2ブラッドレー歩兵戦闘車と共通の足回り・パワートレインへ全面刷新した「M992A3」へとアップデートが重ねられている。自衛火器として車体上部にBrowning M2やMk 19を装備し、現代における機甲砲兵部隊の継続的な火力投射を陰で支える主要な機甲兵站装備として確固たる地位を確立している。

Official Name (正式名称)M992 FAASV (Field artillery ammunition supply vehicle)
Country of Origin (開発国)アメリカ合衆国
Manufacturer (製造メーカー)BAE Systems Inc. (初期開発・設計は Bowen-McLaughlin-York / BMY Combat Systems)
Designed (設計年)1970年代にボウエン・マクラフリン・ヨーク(BMY)社によって開発要求に基づく設計が開始され、1979年から1982年にかけて試作・設計が完了、1982年にアメリカ軍において公式に制式導入され運用が開始
Primary Operators (主な運用組織)アメリカ合衆国:アメリカ陸軍、陸軍州兵:Army National Guard(各装甲旅団戦闘チーム(ABCT)傘下の野戦砲兵大隊にM109砲とともに配備。現在はM109A7自走砲の導入に合わせて、足回りをブラッドレー戦闘車と共通化し機動性を大幅に高めた最新派生型の「M992A3」(別名M109A7運搬車仕様)へのアップグレード・全軍配備が本格的に進行中)
ウクライナ:ウクライナ陸軍(ロシアによる全面侵攻への対抗支援として、米国政府よりM109A6自走砲用のバディ車両として公式に数十両規模の「M992A2」を受領。前線の主要砲兵旅団・対砲兵戦闘ユニットにおいて、155mm砲弾の安全な高速給弾アセットとして実戦運用中)
ブラジル:ブラジル陸軍(米陸軍の余剰防衛装備品(EDA)プログラムから有償調達した40両規模の「M992A2」を公式保有。南米地域における機械化砲兵旅団の基幹弾薬運搬アセットとして現役運用中)
チリ:チリ陸軍(スイス陸軍から中古調達した個体をベースに、スイスRUAG社およびチリ自国のFAMAE社が高度近代化アップデートを施した独自派生バリアントを公式配備。機械化砲兵大隊等において現役運用中)
エジプト:エジプト陸軍(大量のM109自走砲ファミリーを補給するため、これまでに約275両規模の「M992 / M992A2」を大規模に公式調達。野戦砲兵軍の主力重装甲弾薬補給車として前線配備・長期運用中)
モロッコ:モロッコ王立陸軍(北アフリカ地域の防衛力近代化に伴い、2016年以降に米国政府(DSCA)からの公式承認を経て85両規模の「M992A2」を調達。主要な機械化砲兵連隊において現役運用中)
台湾(中華民国):中華民国陸軍(陸軍の各機械化歩兵旅団および装甲旅団傘下の野戦砲兵大隊において運用中。なお、M109A6自走砲自体の導入は近年キャンセルされたが、既存のM109A2/A5自走砲を支える中核装甲補給アセットとして「M992A2」が広く公式現役維持・運用中)
ギリシャ:ギリシャ陸軍(各野戦砲兵部隊・機械化師団において、保有する大量のM109自走砲部隊に追従する標準型装甲弾薬支援車として「M992A2」を公式配備・現役運用中)
スペイン:スペイン陸軍(陸軍の主要な装甲・機械化部隊の砲兵大隊において、自国運用のM109A5自走砲に追従する重装甲補給アセットとして「M992 / M992A2」を公式保有・現役運用中)
インドネシア:インドネシア陸軍(ベルギー軍から中古調達したM109A4等とともに、4両の公式受領が確認されている「M992A2」を陸軍の精鋭砲兵ユニットにおいて限定的ながら最高水準の重装甲給弾アセットとして公式配備・運用中)
タイ:タイ王国陸軍(陸軍の野戦砲兵大隊において、米国から導入した少数のM109A5自走砲の補給・支援を担当する公式バディ車両として、通常型および近代化型を現役維持・運用中)
レバノン:レバノン陸軍(米国の対テロ・防衛援助枠組み等を通じて、通常型および各種バリアントを公式に調達。陸軍砲兵部隊において重要拠点防衛・野戦砲兵アセットの補給用として保有運用中)
スイス:スイス陸軍(自国運用のM109自走砲部隊を支えるため長年公式保有。なお、近年一部の余剰車両がチリ陸軍等へ売却移転されているが、現役の装甲砲兵アセット用として一定数を継続維持)
Crew / Capacity (乗員および兵員輸送数)3名 〜 4名
Combat Weight (戦闘重量)26,100 kg (26.1 t / 28.8 short tons)
Dimensions (寸法: 全長/全幅/全高)W (全幅): 3,150 mm (3.15 m)
L (全長 / 砲身なし車体長): 6,600 mm 〜 6,670 mm (6.6 m)
H (全高 / D指定): 3,240 mm 〜 3,280 mm (3.24 m 〜 3.28 m ※上面マウント部含む)
Armor (装甲の詳細: 複合装甲、ERA、APSの有無)All-welded 5083 aluminum alloy armor (5083溶接アルミニウム合金装甲)
※ベースとなったM109自走砲と同等の厚さ32mmの溶接アルミニウム装甲で構成され、小銃弾や砲弾の破片から内部を保護する。複合装甲や爆発反応装甲(ERA)は装備していない。
Main Armament (主武装)なし
Secondary Armament (副武装)1 x 12.7 mm M2HB heavy machine gun or Mk 19 Automatic Grenade Launcher (車長キューポラ部マウント)
Engine (エンジン出力 hp/kW)Detroit Diesel 8V-71T LHR liquid-cooled supercharged 2-stroke V8 diesel engine (デトロイト・ディーゼル社製 8V-71T 2サイクル水冷過給器付きV型8気筒ディーゼル、出力: 440 hp / 330 kW ※2,350 rpm時 ※初期型M992は405 hp)
Max Speed (最高速度: 整地/不整地)Paved (整地): 56 km/h 〜 64 km/h
Unpaved (不整地): 約 25 km/h 〜 30 km/h
Operational Range (航続距離)354 km (220 miles)

OPERATING FORCES / 運用国・軍種

PR:関連商品

リッチモデル
¥3,861 (2026/07/29 16:22時点 | Yahooショッピング調べ)
画像の引用元
  1. By Sgt. Richard Jones – https://www.dvidshub.net/image/1792047, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=40010766
  2. By U.S. Army National Guard photo by Staff Sgt. Zane Craig – This image was released by the United States National Guard with the ID 220516-Z-PU354-0053 (next).This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required. See Commons:Licensing.العربية ∙ বাংলা ∙Bahasa Indonesia ∙Bahaso Jambi ∙Deutsch ∙ Deutsch (Sie-Form) ∙ English ∙ español ∙ euskara ∙ فارسی ∙ français ∙ italiano ∙ 日本語 ∙ 한국어 ∙ македонски ∙ മലയാളം ∙ Plattdüütsch ∙ Nederlands ∙ polski ∙ پښتو ∙ português ∙ русский ∙ slovenščina ∙ svenska ∙ Türkçe ∙ українська ∙ 简体中文 ∙ 繁體中文 ∙ +/−, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=170775349
  3. By Sgt. Joseph Truckley – https://www.dvidshub.net/image/3692326/1-41-fa-brings-boom, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=62468040
  4. By George E. Koronaios – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=146812180
  5. By The U.S. Army – https://www.flickr.com/photos/35703177@N00/25119051097/, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=88090500
  6. By 玄史生 – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=22618253

上部へスクロール